5.



 年頃になると訪れるものが在る。
 それは女性なら誰しも経験するものであるのだが、人里は慣れて暮らしてきた二人には目を剥くほどに驚き衝撃を受けるものであった。二人はその意味や現象に付いて全くの無知だったのだ。
「レックナート様!!」
 何時になく慌ただしい足音を立ててやってきた弟子に、ルックは閉ざした双眸を向けた。
「どうかしましたか、ルック」
が」
 それ以上はなんと説明していいやらわからず、唸り続ける弟子に何かを感じ取ったらしいレックナートはわかりましたと頷いて姿を消した。どうやらの元へ向かったようだった。
 レックナートがの元を訪れるとベッドの上に座り込んだまま呆然とするが居た。自分にとっては母親も同然のレックナートの現れに、泣き出しそうな表情になり叫ぶ。
「レックナート様! どうしよう、私……」
「落ち着きなさい。大丈夫ですよ。あなたにはまだ何も教えていませんでしたね」
 自分にとってはすっかり無縁のことであったし、にとってもまだ先の話だろうと考えて、伝えるのを忘れていた。気がつけばももう十二になるのだ。訪れてよい年頃である。
 訳が分からず赤い染みを作ったシーツの上で泣き出したにレックナートは静かに告げた。
は大人になったのです」
「へ?」
 情けない声を上げるの頭にレックナートは手を置く。
「女はみな経験するものです。あなたは子供が産める身体になったのですよ」
「……レックナート様、言っている意味がよく分からないんですけど……でも、とにかく私は病気じゃないんですね?」
「ええ」
 詰まる所にやってきたものは月のものであったのだ。初めて経験するにはただ混乱するだけのもので、レックナートがいなければルックとともにパニックに陥っていた事だろう。
 まだ困惑するをなだめて、レックナートはどうしたらよいかを説明した。
 頷きながら黙って聞いていたはレックナートの言葉を全て聞き終えると、姿を消した師が居た場所を呆然と見つめて、横になった。
 痛む下腹部に手を当てて、丸まるように布団を被る。
「わかんないよ……」
 女になったのだと言われても、子供が産める身体になったのだと言われてもよくわからない。ただどうしようもなくお腹が痛くて、身体がだるかった。
 レックナートは女だけが経験するものだといった。それもまた、成長途中のにはよく理解出来ない事であった。




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