17.



問題は、セラにどう告げるべきかだった。
彼女のことだ。恐らくは共にくると言い張るだろう。来るな、と止めはしない。むしろ、ルックの行うこれからのことに、セラの力は必要不可欠だった。
ハルモニアと同じように、セラの力だけを利用するようで些か気が引けたことも事実だが、仕方が無い。
まだ時間はあるけれど、幼いうちに告げておくべきか。ぎりぎりになって告げるべきか、二人は悩んだ。
幼い、とはいうもののセラももう十一になる。物事を理解するには十分な年齢だった。
だから全ての事を告げて、セラが嫌だというなら無理はさせずにというのが二人の出した結論だった。
「確かにセラの力は稀少であるし、貴重だ。でも……」
「わかってる。大丈夫。きっと、セラもわかってくれる」
慰めるようにはルックを背から抱き締めた。セラがいなくても、あなたは決して独りじゃないから。そう告げる。

セラは二人を見つめていた。
青い瞳はいっぱいにまで見開かれていて、戸惑いに揺れている。
「どうするかは君が自分で決めるといい。僕らは強要はしない」
「ゆっくり考えて」
親代わりのようなルックとの言葉に、セラは弾かれたように首を振った。シャランと髪飾りが鳴り、プラチナの髪が揺れる。
「セラも共に行きます」
「セラ?」
「いいのかい?」
「セラは……セラもルック様のお力になりたいのです。ですから、どうか」
セラの必死な様子は、置いていかれる子供が親にすがる。そんな風にも見受けられた。
 泣きそうになってすがる、セラの手を取りは優しく微笑んだ。
「なら……一緒に行こう」

三人が魔術師の島を出たのは、それからさらに数年が過ぎてから。すっかり成長し、幼さの抜けたセラはルックやよりも年上に見えるほどになっていた。
真の紋章の継承者であるルックやは、今の年齢以上に年を取らない。肉体的にも、外見的にも。
暗い闇が世界を覆う中、三人はお互いの手をしっかりと握り締めて住み慣れた塔を出た。




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