気付いた事が在る。
今更と言われれば、とても今更な事。
もルックも、レックナートもセラも。この塔で暮らしている四人には全く血のつながりというものはなかった。
けれど本当の家族のように暮らしている。そうすることが出来ている。
だからは思う。血のつながりだけの絆なんて本当は不確かなものなのだ。長い間友にくらし築いてきた絆こそが、真実。
だって今、はとても幸せだった。村に居たときよりも、ずっと幸せかもしれないと思える自分が居る。
ルックやセラと過ごす日々の中で、はふいにそんな思いを抱いたのだった。
幼いながらもセラはとても賢かった。少し感情表現が苦手なようだったが、とても素直なよい子だとは思っている。まるで自分に娘が出来たようで嬉しくなった。考えてみればも、ルックもそうだが子供が居ても可笑しくはない年頃なのだ。かといって、子供が出来た自分たちなど想像がつない二人であったけれど。
「セラ、おいで」
手招きをして呼ぶと、部屋の隅で椅子に座り小難しい本を呼んでいたセラは静かに顔をあげ、小走りで近づいてきた。
「なんですか、様」
見あげて問い掛けてくるセラに後ろを向くように言う。あらかじめ用意しておいたブラシで彼女の髪を梳いて纏め上げ、髪飾りをつけてあげた。先ごろ出かけた時見付けたもので、青を基調としてデザインされたこの髪飾りはセラの髪によく映えると思ったのだ。
バレッタのような構造のそれは、左右に幾つかの玉飾りが着いていて動くと静かな音を奏でて揺れる。
付け終えるとセラはそうと手を伸ばして髪飾りに触れた。
手触りで確認すると嬉しそうに微笑む。
「うん。似合うね。セラには青が一番似合うかな」
ルックに見せに行こう。そういってセラの小さな手を引くと、セラは恥ずかしそうに頷いた。
「ルック。見てみて」
書庫で探し物をしていたルックは姿を見せたとセラを高い位置から見下ろした。はしごに登っていた為、自然とそういう見方になる。
「可愛いでしょ? この前買った髪飾り。セラによく似合うの」
「ああ……いいんじゃない」
ルックは頷く。の言う通り、セラにとても似合っているとルックも感じた。
梯子を降りて二人の元へ近づく。セラはとルックを交互に見やって、何かが言いたそうにしていた。
「どうしたの、セラ」
「何?」
「様とルック様。母様と父様みたいです」
余りにもセラが嬉しそうに言うものだから。二人は突っ込む事も忘れて顔を見合わせ、僅かに顔を赤くすると困ったように笑っただけだった。
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