「ねえ、これなんとかして」
ぎゅぅと抱き着いて離れない一匹の少年。
ぐいぐいと頬を押し当てて離れる気配を微塵も見せない彼、支葵に苦笑を零しながらは拓麻に助けを求めてみた。が。彼は冷たかった。
「んー、無理かな」
「殺生な」
周りに視線を走らせてみるが、仲間たちは皆見て見ぬふりをした。枢までもが苦笑して二人を黙ってみている。
「もー。支葵君? どうしたの、ねぇ?」
離れないなら仕方ない。しかしずっと立ったままこの体勢もきつくなってきたので、は背後に視線を走らせると大き目のソファを見つけた。よし、と目標を定めて支葵の頭を抱きかかえたままずるずると後退する。そのままソファの前まで辿り着くとよっこらせ、と腰を下ろした。
「だってズルイ」
「ズルイって、何が?」
「一条さんとか、寮長とかばっかりさんと仲良くしてる。ズルイ」
一瞬きょとんとしたは顔を上げ、同じようにきょとんとしている二人の顔(しかも珍しい)を見てくすくすと笑った。
「ズルイって、ねぇ。そう言われてもほら、枢と拓麻は昔馴染みだしさ」
枢に至っては友達以上の存在でもある。
ずっと一緒にいたから仲がいいのは当たり前で、むしろ彼らがいない方が感覚としてはおかしいのだ。
しかしそう言ってみたものの支葵は納得が出来ないらしく、むーっと声を上げた。
ああなんだか子供みたいだな、などとはそんなことを考える。実際生きてきた年月を思えば、支葵がの子供であっても年齢的におかしくは無いのだ。見た目は別として。
尚もしがみついてくる支葵の頭をぽんぽんと撫でて湧き上がる愛おしさには小さく微笑んだ。