泣かないように。そう決めていたけれど、やっぱり無理だ。悲しいから、どうしたって涙は出るし、頬を流れるそれは留まることを知らないかのようにぽたりぽたりと顎先から滴り落ちる。
泣かないように。もうずっと決めていたのに。どうしてこんなに悲しいんだろう。自分で決めたことなのに、後悔なんてしていないはずなのに。
あなたの居ない世界に、私は耐えられないのかもしれない。
だけど自分から、私はその世界に旅立とうとしている。馬鹿みたいだね。でもずっとここにはいられないと知ってしまったから。
ねぇ、枢。私が居なくなったら、あなたは悲しむかしら。少しでも寂しいと感じてくれるかしら。いなくなった私を探し出そうとしてくれるのかしら。
咲き誇る花は美しいけれど、散り終えた花は惨めだわ。私はそうはなりたくないの。だから、せめて今あなたに愛されているうちに、私はあなたの元を去るの。
ごめんなさい、枢。どうか許してね、なんていわないけれど。
私はどうやらあなたを愛しすぎていたみたいだわ。
04:花が散る前に ヴァンパイア騎士・枢
title by 追憶の苑