あなたはとても優しい人。
ああ、なんてにくいのかしら。あの子にあなたが笑顔を向けるたび、私の胸はちりちりと焦がされていくの。
無邪気に笑うあの子を見るたび、私の中に怒りが生まれる。
いっそ壊してしまおうかしら。
明るい笑顔が凍り付いて絶望に染まり行くのを見るのはどれほど楽しいことなのかしら。
けれど駄目ね。そんなことをしてしまったらきっと、あなたは私を軽蔑する。冷たい怒りを優しい笑顔の下に隠して私を突き放すでしょう。そんなこと、許せないもの。耐えられないわ。
だから私はひたすらこらえるしかないの。あの子が生きることを。
今ならあなたの気持ちが良くわかるの。
あなたの大切な優姫ちゃんを傷つけた、彼(かわいいかわいい同胞。子供たちの一人)をあなたは憎くて、殺してしまいたくてたまらないのにけれどそうしなかった。
傷つけることすらせず、生かしているのはひとえに優姫ちゃんのため。
ああ、ああ、なんて、なんて、憎いのかしら。
ねえ、やっぱり 壊して しまっても い い?
「枢は優姫ちゃんのことが大切なんだね」
(もしも私があの子のことを)
「どうしたんだい、突然」
(殺してしまいたいほど憎く思っていると知ったら)
「うらやましくなっただけ」
(あなたはどんな顔をするのかしら)
「やきもち?」
「…そうかもね」
そうして私は笑う。
胸の奥に巣くう醜い感情をひたかくし、あなたに愛されるために私は、笑う。