人と違うことは、そんなにいけないけとだろうか。
彼は言う。自分は人ではない穢れた身であるから触れてはいけないと。差し伸べる私の手を拒む。
彼はとても優しい人だから、そうして拒むことで相手を少なからず傷つけてしまうことにも気付いている。気付いて自らも傷つく。とてもとても哀しい人。
彼は何を恐れているのだろう。彼が人でないことなんて、全て承知の上だ。それでも私は彼が恋しくて愛しいから、触れたいと思う。手を繋いで彼の温もりに触れたい。唇を重ねて想いの丈を伝えたい。いつも悲しげな瞳をしている彼を力の限り抱き締めたいと思う、なのに。彼は私を拒絶する。
心からの拒絶ではないと分かっていても悲しくなる。
「敦盛さん」
あなたがもし、人でない異質なものであるというならばそれは私も同じこと。
神に愛され、この時代に招かれた望美とは違って私は偶然ここに飛ばされたイレギュラーな存在。本当なら居るべきではなかったもの。この世界にとって私は異物だ。
けれどこうして、今なお存在しているということは、少なからず世界に赦されているからなのではないかと思うのだ。
「敦盛さんも同じじゃないかな」
私の言葉に彼は不思議そうに目を瞬く。
死して再びこの世に生を受けたこと。彼は歪んだ理の中に存在しているのかもしれない。けれど彼は八葉で、神子を守る為の使命を持っている。他の誰でもない、敦盛さんが選ばれたのはそれは神が、世界が敦盛さんを認めた証なのではないだろうか。
怨霊だとか人間だとか、そんなものは関係なくて"平敦盛"という一人の人間を、必要とした。それだけのことなのではないだろうか。
だから自分を蔑むのはどうか止めて欲しい。一人になろうとしないで欲しい。受け入れて欲しいなんて我が侭は言わないから、ただ拒まないで欲しいと思う。
そぅと敦盛さんの手を握れば、彼は今度そ震えこそすれ拒みはしなかった。
初めて感じた温もりは、涙が出るくらい優しくて、静かに涙を溢す私に敦盛さんが慌てたような顔をしている。それをとても愛しく思った。