少し前は確か地下一階くらいまでしかなくて。
いつの間にかなみなみと溢れんばかりだった水は引き、さらにその下の階が現れていた。
それと同時に見たこと無い部屋とかもいっぱい出てきて、この城は一体どういうつくりになってるんだろうか。
「王子、このお城っていつの間にか大きくなってますよね。誰が増築してるんですか?」
なんとなく気になっていたことだったので、何気なく王子に訊ねてみるとニッコリ笑顔でこう返された。
「うん。仲間が増えるとね、城が勝手に大きくなっていくんだ」
……そんなバカな。
疑いのまなざしで王子を見るが、王子は相変わらず笑顔のまま。
城が勝手に大きくなっていくなんてありえないだろうと思う反面。いや待てここはシンダルの遺跡であるのだし、そういうことももしかしたらありえるのかもしれないと一人納得していたら王子が勢いよく噴出した。
「ぶっ、くくっ…あはは」
お腹を抱えて可笑しくてたまらないというように笑い転げる王子をじとりと目を眇めてにらむ。
騙したな……?
「王子……騙しましたね?」
「ご、ごめ……っ、だってまさかそんなに素直に信じてくれるなんて思わなかっ…」
「……もう知りません」
ぷいっと背を向けて部屋を出て行こうとすれば、後ろから慌てたような王子の声がする。
「あ、待ってよ! ごめんてば!」
許してやるもんか。
おいたが過ぎる子には少しお仕置きが必要なのだ。
今日一日口を利いてあげないことにしよう。そう決心し、呼びかける王子の声に耳を貸さず扉のノブに手を掛けると駆け寄ってくる足音がしてぐいっと袖を引かれた。
はぁと溜息をつきつつ振り向けば、しゅんとうなだれた様子の王子。
「反省したんですか?」
「うん。ごめんね?」
本当に反省してるのかどうか怪しいところだが、私自身王子に弱いということは認めざるを得ない。駄目だ駄目だと思いつつ、仕舞いには許してしまう自分に情けなさ一杯だ。
「…はぁ。いいですよ。許してあげます。それで本当のところどうなんですか?」
「え? ああ、城のこと? ビーバー族やケイヴドワーフたちがやってくれてるみたいだよ。でも彼らも知らないところで城が大きくなってる時もあるみたいだけど」
全部が全部王子のウソではないらしい。
なんでもないことのように告げられる真実に、あいた口がふさがらなくなった。