告げる

「好きだよ」
 それは唐突に告げられた言葉だった。
 呆然とする私をじっと見つめて、王子は同じ言葉を繰り返す。
が好きだ。ずっと、好きだった」
 だんだんと王子の言葉が自分の中に浸透してきて、王子の声を、言葉を頭の中で反芻すると顔が赤く火照っていくのがわかった。
 王子が私を好きだと言ってくれている。
 それはきっと、家族や友人に対するものではなくて。
 もっとそれ以上の……。
「…っ、本当、ですか?」
 確かめるように聞き返す私に、王子はふっと笑ってうんと頷いた。
「あ……」
 私も好きだと。
 同じように王子のことを好きでいるのだと告げようとしたら、喉に何かが詰まって声が出なかった。
?」
 不思議そうに王子が私の名を呼ぶ。立ち上がった王子は私の傍によると手を伸ばし、そっと私の頬に触れた。
 私は泣いていた。

 もう一度名を呼んで、涙を拭うように顔にまぶたに王子は唇を寄せる。
 そうしてそれは私の唇にも重なる。
 薄く開いた瞼の向こうには王子の綺麗な顔があって。
 おずおずと王子の背に腕を回した。
「……ん」
 名残惜しげに唇が離れて、王子の瞳と目が合った時私はようやく自分の気持ちを口にした。
「好きです」
 王子の手が私の首筋に触れる。
 少し目を伏せて告げれば、王子の手が頬に触れてそっと上を向かされた。
「もう一度言って?」
「王子が好きです。様の事が、私も好きです」
 目元がほんのりと赤く染まって、王子は嬉しそうに微笑んだ。