確か買い物に行くためにビッキーにテレポートを頼んだはずんだんだけど。
私は今どこにいるのだろうか。
「困った…」
ぐるりと見渡す。狭い部屋の中。石造りの、物置のような。少しジメジメしてて肌寒い。
私は町に行きたいと言ったはずなのに、これはどこからどうみても建物の中だ。窓がないからどこであるのかはっきりとわからないのだけど。
でも多分、憶測ではあるがこの造りの感じからすると城の一室だと思う。
「でも見たこと無いわね。こんな部屋あったかしら」
疑問に思うなら部屋の外に出て確かめれば良いと思うだろうけれど、生憎とそうも行かなかった。
何故って?
……部屋の扉が開かないからに決まってるじゃない!
「あーあ。誰か気付いてきてくれるといいんだけど」
溜息一つ。
大人しく救援を待つことにした。
……が。
多分二時間くらいたっただろう。一向に誰かが助けに来てくれる気配は、ない。
こんなところで餓死するのだけは勘弁願いたいんだけど、さてどうしたものか。
首をひねっていると、先ほどまでは静かだった扉の向こうがにわかに騒がしくなった。
助けた来たのだろうか。
『…め…ね、私…失敗……』
『だい……うぶ……ここ……違……』
『…分……うん……な、感………』
途切れ途切れに聞こえてくる声。
なんといってるのかよく聞き取れない。扉を挟んだ音だから無理もない。
立ち上がって扉の方に歩いていくと突然。
バァアアン!!!
すさまじい音と共に扉が吹っ飛んだ。
「ぎゃあぁ!」
思わず後方に飛びのく。吹っ飛んだ扉は見事破壊されていて、一歩間違えば私のあれの仲間入りをしていたのかもしれないと思うと背筋がぞっとした。
「!」
棍を右手に構えたまま、嬉しそうに私の名を呼ぶのは王子で。
そんなに笑顔で名前を呼ばれても、罷り違えば王子のせいで無事ではすまなかったのかもしれないと思うと、私は助けに来てくれたことを素直に喜ぶ気にはなれなかった。