これがあなたの望みですか。
親友の亡骸をかき抱いて、涙する彼に。
つられるように、涙を零した。
運命とは……なんと残酷なものだろう。
まだほんの少年であるというのに。
戦を終わらせるために、半ば強引に軍主として立てられて。
本来ならば背負わなくていいたくさんの重責を背負わされて。
そうして彼は死に物狂いで、戦いつづけてきたのに。
失わないために。
守るために。
なのに。
神様。
あなたはどうして、彼の最も大切な人たちを奪っていくのですか。
どうしてそんなに……残酷なことが出来るのですか。
ナナミ。
そして、ジョウイ。
彼にとってこの二人はかけがえの無い存在であったのに。
たった一人の家族、姉であるナナミ。
幼い頃からの親友。幼馴染のジョウイ。
彼と敵対し、戦いつづけてきたのはひとえに……何時か訪れるであろう、明るく穏やかな未来を夢見ていたからであったろうに。
それを無残にも打ち砕いたそれは……。
神様(あなた)が作り出し、そうして運命の流れの中で彼が手にせざるを得なかった紋章の呪い。
あまりにも、酷すぎる。
まだほんの。
16歳の少年が。
一軍の、軍主として戦って。
姉を失って。
親友を失って。
そうして望みもしなかった紋章の力を手に入れて、不老になって。
一国の、王となる。
その彼を待ち受けるものは安易に想像がつく。
だからこそ。
私は神様(あなた)を恨まずにはいられないのだ。
年を取らない国王に対して、国民がどのような思いを抱くのか。
それに対して、彼がどれだけ傷ついていくのか。
そうして。
本来ならば彼を励まし、支え、ともに乗り越えて行くのであったろうナナミもジョウイももういない。
私では、彼を支えていく事なんてできないから。
ああ、神様。
あなたは、どうして。
そんなにも。
無慈悲なのですか。
ただ只管に涙する彼の背を見つめて。
答えの返る事の無い問いを、私は繰り返しつづける。