切な系100題「019:振り向かない背中」

 気が付けば、目が追っていた。
 そんな僕に、君は気付く様子すらないけれど。





 君が誰を見ているか、なんてそんなのを知るのは簡単なことだった。
 いつもみていればいやでも気が付く。
 アイツの姿を探して、見つけて。
 少しだけ顔を紅くして、すぐに視線を逸らして俯く。
 でも嬉しそうに、笑っている。
 いつものことだ。
 そう、君はいつもアイツだけを見ている。
 僕のことは気付かない。
 はっきりいって。
 悔しい。





「ねえ、ルック君。今日軍主様はどこへ行くか知っている?」

 わざわざ石版前までやってきて、何も知らないような顔で笑って僕にそう尋ねてくる君。
 効果音がつきそうなほど、にこにこと笑って言って来るもんだから少しイラついた。

「知るわけないだろ。なんで僕に聞くのさ」

 こんな事が言いたいわけじゃないのに。
 口を開けば勝手に飛び出してくるのは、相手を傷つけるだろう言葉たちばかり。

「あ、そうよね。ごめんなさい」

 整った顔に少しだけ悲しげな色を浮かべて謝った。
 謝って欲しいわけじゃない。
 傷つけたいわけじゃなかったのに。
 ああまるで小さな子供だ、僕は。
 好きな人に振り向いて欲しいから、気にかけて欲しいから意地悪をする。
 子供と同じなんだ……。

「っ……なら、今日はグリンヒルの方へ行くって言ってたよ。……明後日くらいまで帰らないんじゃない?」

 とぼとぼと背を向けて歩き出していたに、感情を押さえた声で言う。
 は振り向いて、嬉しそうに笑った。

  「ありがとう。ルック君」



 呼び止めても振り向かない君の背を見送って。
 アイツに向ける笑顔に、自分らしくも無い嫉妬をして。
 嫌になる。
 でも。
 君を好きだという気持ちは、どうしたって偽れないんだ……。


 気付いてよ。

 

 僕は君が、好きなんだ……。






好きなキャラで失恋話って結構好きなんです…。