気が付けば、目が追っていた。
そんな僕に、君は気付く様子すらないけれど。
君が誰を見ているか、なんてそんなのを知るのは簡単なことだった。
いつもみていればいやでも気が付く。
アイツの姿を探して、見つけて。
少しだけ顔を紅くして、すぐに視線を逸らして俯く。
でも嬉しそうに、笑っている。
いつものことだ。
そう、君はいつもアイツだけを見ている。
僕のことは気付かない。
はっきりいって。
悔しい。
「ねえ、ルック君。今日軍主様はどこへ行くか知っている?」
わざわざ石版前までやってきて、何も知らないような顔で笑って僕にそう尋ねてくる君。
効果音がつきそうなほど、にこにこと笑って言って来るもんだから少しイラついた。
「知るわけないだろ。なんで僕に聞くのさ」
こんな事が言いたいわけじゃないのに。
口を開けば勝手に飛び出してくるのは、相手を傷つけるだろう言葉たちばかり。
「あ、そうよね。ごめんなさい」
整った顔に少しだけ悲しげな色を浮かべて謝った。
謝って欲しいわけじゃない。
傷つけたいわけじゃなかったのに。
ああまるで小さな子供だ、僕は。
好きな人に振り向いて欲しいから、気にかけて欲しいから意地悪をする。
子供と同じなんだ……。
「っ……なら、今日はグリンヒルの方へ行くって言ってたよ。……明後日くらいまで帰らないんじゃない?」
とぼとぼと背を向けて歩き出していたに、感情を押さえた声で言う。
は振り向いて、嬉しそうに笑った。
「ありがとう。ルック君」
呼び止めても振り向かない君の背を見送って。
アイツに向ける笑顔に、自分らしくも無い嫉妬をして。
嫌になる。
でも。
君を好きだという気持ちは、どうしたって偽れないんだ……。
気付いてよ。
。
僕は君が、好きなんだ……。